「AIチャットボットを導入したけど、自社の商品について聞かれると『お問い合わせください』としか答えられない…」
こんな経験はありませんか?
実はこれ、AIの性能の問題ではなく、AIが「あなたの会社の情報を知らない」ことが原因です。この問題を解決する技術が「RAG」です。
この記事では、RAGとは何か、なぜ今注目されているのか、そしてどのようにAIチャットボットの精度を向上させるのかを分かりやすく解説します。
RAGとは?
RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語では「検索拡張生成」と訳されます。
簡単に言うと、AIが回答を生成する際に、事前に用意されたデータベースや資料を「検索」して、その情報を「参照しながら」回答する技術です。
従来のAIとRAG搭載AIの違い
従来のAIチャットボットは、学習時に取り込んだ一般的な知識だけで回答を生成します。そのため、あなたの会社の商品名、価格、サービス内容といった固有の情報については答えることができません。
「じゃあ、プロンプトに会社の情報を全部入れればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、これには大きな問題があります。
まず、LLMには入力できる文字数に上限があります。商品カタログやFAQ、マニュアルなど、すべての資料を毎回送ることは現実的ではありません。仮に送れたとしても、トークン数に応じてAPI料金が跳ね上がります。毎回全データを送っていたら、コストが膨大になってしまいます。
さらに、データ量が多いほど処理に時間がかかり、回答が遅くなります。関係ない情報が多いと、AIが的外れな回答をする「ノイズ」の原因にもなります。
一方、RAGを搭載したAIは違います。質問に関連する情報だけをデータベースから検索して取り出し、必要な部分だけをAIに渡します。あなたがアップロードした資料(商品カタログ、FAQ、マニュアルなど)から、質問に関連する箇所を参照しながら回答を生成するため、低コストで、高速で、精度の高い回答ができるのです。
RAGの仕組み
RAGは主に3つのステップで動作します。
ステップ1:データの準備
まず、AIに参照させたい資料を用意します。PDFの商品カタログ、WebサイトのURL、FAQ資料など、様々な形式のデータを登録できます。
ステップ2:検索(Retrieval)
ユーザーから質問が来ると、AIはまず登録されたデータの中から、質問に関連する情報を検索します。
ステップ3:生成(Generation)
検索で見つかった情報を参考にしながら、AIが自然な文章で回答を生成します。
この仕組みにより、AIは「知らないことは答えられない」という制限を超えて、あなたが用意した情報に基づいた正確な回答ができるようになります。
RAGがないとどうなる?
RAGを搭載していないAIチャットボットでは、以下のような問題が発生します。
自社情報に答えられない
お客様:「〇〇の料金を教えてください」
AI:「申し訳ございません。詳しくはお問い合わせください」
商品の価格や仕様など、基本的な質問にも答えられず、結局お客様を電話やメールに誘導することになります。
従来型のチャットボットで自社情報に対応しようとすると、想定される質問パターンをすべて登録する必要があります。「料金は?」「いくら?」「値段を教えて」など、同じ意味でも表現が違えば別々に設定が必要です。
商品数が増えるほどパターンは爆発的に増加し、バックエンドのロジックも複雑化。開発コストが数百万円に膨らむケースも珍しくありません。
一般的な回答しかできない
お客様:「御社のサービスの特徴は?」
AI:「一般的に、このようなサービスでは〜」
自社のサービスについて聞かれているのに、一般論しか答えられません。
ハルシネーション(嘘)のリスク
AIが知らない情報について質問されると、もっともらしい嘘(ハルシネーション)を生成してしまうリスクがあります。これは企業の信頼を損なう重大な問題です。
RAGを導入するメリット
正確な回答が可能に
登録した資料に基づいて回答するため、商品の価格、仕様、在庫状況など、自社固有の情報について正確に答えることができます。
情報の更新が簡単
新商品が出たり、価格が変わったりしても、資料を更新するだけでAIの回答も最新の情報に変わります。AIを一から学習し直す必要はありません。
ハルシネーションの抑制
参照元の情報に基づいて回答するため、AIが事実と異なる情報を生成するリスクを大幅に減らすことができます。
導入コストの削減
従来、AIに自社情報を学習させるには膨大なコストがかかりました。RAGなら、資料をアップロードするだけで済むため、導入コストを大幅に抑えられます。
RAG導入時の注意点
RAGは万能ではありません。効果を最大化するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
資料の質が回答の質を左右する
AIは登録された資料を参照して回答します。つまり、資料の内容が古かったり、情報が不十分だったりすると、回答の質も下がります。
定期的に資料を見直し、最新の情報に更新することが重要です。
資料に書いていないことには答えられない
RAGはあくまで「登録された情報の範囲内」で回答します。資料に書かれていない質問については、「その情報は登録されていません」といった回答になります。
お客様からよく聞かれる質問は、あらかじめ資料に含めておくことが大切です。
GeminiのRAG:他にはない強み
RAG技術において、GoogleのGeminiには他のLLMにはない大きな強みがあります。
それは、PDFやWebサイトを直接参照できること。ChatGPTやClaudeでは、RAGを実現するために別途ベクトルデータベースを構築する必要がありますが、GeminiはAPIに直接ファイルを渡すだけでRAGが実現できます。しかもAPIコストが他と比べてかなり安い。
ただし、開発者として実際に使ってみると、このPDF・Webサイト参照の機能はまだ進化段階だと感じます。
PDFを参照させると回答スピードに少しハンディキャップがあったり、マークダウンなどできちんと整理されたドキュメントと比べると精度に差が出ることも。とはいえ、この機能自体がGeminiにしかないものなので、今後の進化に期待しています。
私たちの「AIチャット」でも、このGeminiのPDFアップロード・Webサイト参照機能を使えます。無料アカウントで実際に試せますので、ぜひ体験してみてください。
高性能AIチャットボットを無料で試してみませんか?
私たちが開発した「AIチャット」は、今話題のGoogle Geminiを搭載した高性能AIチャットボットです。
この記事で紹介したRAG技術にも対応。PDFやWebページをアップロードするだけで、あなたの会社専用のAIアシスタントが完成します。
無料プランあり – 月間のアクセスが少ないサイトなら、無料プランで十分。まずは実際に触ってみて、自社の資料を読み込ませて、どんな回答が返ってくるか試してみてください。
※無料プランは予告なく終了する場合があります
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例えば、自社のデータベースと連携させて、リアルタイムの在庫情報や商品データにアクセスできるAIチャットボットの構築が可能です。
開発事例:不動産向け物件検索AI
物件データベースと連携し、サイト訪問者がチャットで条件を伝えるだけで最適な物件を提案。「駅近で家賃8万円以下のペット可物件」といった自然な会話で部屋探しができるシステムを開発しています。
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在庫データベースと連携し、「予算150万円以下で燃費の良いSUV」などの条件をチャットで伝えるだけで、販売中の車両から最適な1台を提案。お客様の希望に合わせた車探しをAIがサポートします。
このような業界特化のAIソリューションを開発しています。
まとめ
RAGは、AIチャットボットの「自社情報に答えられない」という根本的な課題を解決する技術です。
PDFやWebページをアップロードするだけで、AIがあなたの会社専用のアシスタントに変わります。数年前なら数百万円かかっていたこの仕組みも、今では月額数千円から導入できるようになりました。
「AIチャットボットを導入したいけど、ちゃんと自社の情報を答えられるか不安…」という方は、RAG搭載のサービスを選ぶことをおすすめします。

